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いなか、の、じけん
いなか、の、じけん
夢野 久作
「探偵趣味」「猟奇」1927(昭和2)年7月~1930(昭和5)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,535 字 · 78 页
青白い糸のような身体に、髪毛をバラバラとふり乱して、眼の玉を真白に剥き出して、歯をギリギリと噛んで、まるで般若のようにスゴイ顔つきであったが、慌てて抱き止めようとする西村さんを突き飛ばすと、踊りを止めてボンヤリ突立っているハイカラ美人に、ヨロヨロとよろめきかかった。そのままシッカリと抱き付いて、眼の玉をギョロギョロさせながら、口を耳までアーンと開いて喰い付こうとした。それを西村さんが一生懸命に引き離して、ハイカラ美人の手を取りながら、自動車に乗ってドンドン逃げて行った。あとにはお母さんが片息になって倒れているのを、皆で介抱しているようであったが、離れた処から見ていた上に、言葉が普通と違っているので、どんな経緯なのかサッパリわからなかった……という子守女たちの報告であった。
「フーン。それは、わかり切っとるじゃないか」
と、聞いていた荒物屋の隠居は、新聞片手に子守女たちを見まわした。
「西村さんのお母さんが、そんな女は嫁にすることはならんと云うて、止めたまでの事じゃがナ」
子守女たちは、みんな妙な顔をした。何だかわかったような、わからぬようなアンバイで、張り合い抜けがしたように、荒物屋の店先から散って行った。