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いわゆるしぜんのびとしぜんのあい
いわゆる自然の美と自然の愛
丘 浅次郎
「時代思潮」1905(明治38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,029 字 · 16 页
強い光を放つ物体を視るときに、網膜上にその像の映じたところだけに光を感ずるのみならず、これに接する周囲の部分も同じくいくぶんか光を感ずるので光が実際より大きく見えることを生理学では Irradiation と名づけるが、われらから見ると自然物を愛すべく感ずるのは単に利他心の Irradiation に過ぎぬ。宇宙万物を愛することは今日人道の最高程度のごとくに思われているが、以上のごとき原因に基づくもの故、実際はただ利他心という本能の一種の錯誤的作用に外ならぬのである。人類および自然を虚心平気に研究すれば従来神聖視し来ったものの実はあまり神聖にあらざることを発見することがしばしばあるが、われらはそのたびごとに「認識に達する途中には多くの恥を堪え通さねばならぬ、このことがなかったならば認識の興味もきわめて少ないであろう」というた「ニイチェ」の言葉を思い出すを禁じ得ない。
なお詳に考えて見るに自己を愛するばかりでは家は治まらず家を愛するばかりでは国が立たぬゆえ、家を愛し国を愛することは人間の生存上必要であるが、この心は人間にてはけっして未だ発達し終えたわけではなくわずかに芽を出しかかった位に過ぎぬ。