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おかよ
おかよ
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1942(昭和17)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,116 字 · 19 页
どちらもあまり口数はきかなかったけれども、「みなしご」ということがお互いの気持をかたくむすびつけた。
――あの方の気のお弱いのは、いつも独り法師だからだ、お心はあのとおりまっすぐだし、ご容子だって平の足軽とはみえないおりっぱさだし、お顔だちもりりしいし、おかよはよくそう思った。――運さえまわって来れば、きっと槍ひと筋のご出世をなさるに違いない。
そこへ島原の乱がおこった、まず、板倉内膳正重昌を大将とし、石谷十蔵貞清をその副として討伐せしめたが、賊徒が思いのほか頑強でなかなか落城せぬため、追っかけ松平伊豆守信綱と戸田左門氏鉄を派し、さらに年を越えて寛永十五年正月には、細川越中守忠利、有馬玄蕃頭、立花飛騨守、小笠原、鍋島、黒田等々、ほとんど全九州の諸侯をあげて、島原攻めに参加せしめた。
――あの方の御武運がめぐってきた。
おかよはわが事のようによろこんだ、しかし弥次郎は迷惑そうだった。迷惑というより恐怖である。できることなら戦場へゆきたくないという気持がありありとみえた。いまも今「わたしは行かずに済むかも知れぬ」と云うようすには、それがあからさまに表われている。