轻松读懂日语经典作品
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页
「静かなけしきだ、向うと、こっちと、あっちに山が見える」と彼は呟いた、「人間や犬や猫の姿さえ見えない、松林と杉林と、ああ、そのあいだに、あざやかな赤や朱色の紅葉が見える、きれいだなあ」
しかしなんだかぼやっとしている、と彼は思いながら、あるきだした。まるで夢をみているようだ。
「眼のせいだな」と彼はまた呟いた、「――度の違うめがねを掛けているような気持だ、人間が餓死をするときは、こんなふうなことから始まるのだろうか」
彼はよろめき、半ば以上枯れた草の密生している、堤腰のような斜面にしりもちをついた。
彼はすぐに立ちあがろうとした。誰かに見られていて、そんなぶざまな恰好を笑われたくないという、漠然とした自尊心のためであったが、立ちあがろうとする努力とは反対に、ずるずると辷り、ついには仰向けに倒れて、動けなくなった。
「高川の叔父さんもいい人だ、松山船長も、中島漁撈長もいい人だった」と彼は呟いた、「みんないい人ばかりだったな、みんな死んじゃったけれど、いい人たちばかりだった」
松山隆二は首を振った。すると頭の中で渦が巻き返すような気持になり、意識がすっと遠くなるのを感じた。