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おじさんのはなし

おじさんの話

小山 清

「新潮 第五十巻七号」新潮社、1953(昭和28)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,232 字 · 42 页

青空文庫

私はほっとして随分気持がらくになった。おじさんが私を赦してくれていることがわかったから。

おじさんが行っている食堂の客は、殆どが常連で、皆んな朝に夕にここに寄って顔を合わしているのであった。皆んな素朴な生業の人ばかりであった。一日の仕事をすましてここに集り、食事をして歓談のひとときを過ごして、それからそれぞれ宿へ引き上げているようであった。一椀の飯に、一杯の汁に、一日の憩いと解放を感ずることの出来る人たちであった。こういう人たちの間におじさんが生活の道を見出していることが、おじさんの人柄にふさわしいように私には思えるのであった。ここに集る人たちの間では、おじさんが最年長者のようであった。

ある日、食堂へ行ったら、おじさんの姿は見えなかった。食堂のおかみさんに、おじさんがもう帰ったのか、それともまだ来ないのか訊くと、おじさんは昨日この先の病院へ入院したという話であった。大腸カタル、若しかしたら疫痢かも知れませんよとおかみさんは云った。どんな具合でしょうかと訊くと、なにしろ年寄ですからねえと云った。私は病院の所在をおかみさんからきいて、すぐ病院へ行った。