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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页

青空文庫

ギューッ」

再びテーブルが先刻以上の快速力で凹井の胃袋に突き当っていた。凹井は胃袋を押えて、もう一度、

「ギューッ、グッ」

と呻いて、どうやら他人の気持というものが意識にのぼったらしく、てれかくしに笑いながら、いかにもミレンがましく沈黙した。

お魚女史は嵐の中を何やら大きなフロシキ包みをブラ下げてきたのである。凹井の沈黙を見とゞけると、

「アラ、ごめんなさいネエ」

とニヤリと笑って、フロシキ包みの中から、ピースの箱を三つとりだしてきて、テーブルの上へならべた。

「先生方、これ、御存知ィ。今度はじめた内職なのよウ。弁吉はお金がないから、ダメよウ。でも、よかったわア。坂口先生お一人じゃアなんだか、悪いようだものウ。凹井先生と般若先生が居合して下さるなんて、素敵ねえ。先生方は、お金持ちでしょう。裏口営業の常連なのよウ。御存知だわねエ、こんなことオ」

三ツ並べたピースの箱を裏がえしにして見せた。まんなかの一ツの箱の中央がむしりとられている。ちかごろマーケットなどで流行しているトバクである。

「アラ、奥様ア、すみませんですウ。先生の紙入れ、持ってきて下さいませんことウ。