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おさかなじょし
お魚女史
「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页
ほんとに、すみませんわ。私、貧乏なんですもの、つらいですわア。あらア、ほんとに、まことに、恐れ入りましたわ。奥様もハッて下さいね。だって、奥様ア、私、ほんとに、つらいんですわ。ねえ、先生方、一回、お一人、五百円の賭け金よ。いゝですかアやりますよウ」
私の女房が、これ又、トンチンカンではオクレをとらないタチの女で、バカらしいことは、忽ち相好をくずして、一役買ってしまうのである。イソイソと紙入れをひらいて、五百円の束をつくって、
「あらア、もういゝの。えーと、コレダ」
「アラ、まだヨッ。キャーッ。ワーッ。まだ、まだ、キャーッ」
二人の女は忽ち目の色が変っているが、さすがに先生方は札束をおだしにならない。女房はフと気がついて、ノボセ気味にイソイソとお札を数えて束にして、
「ハイ、凹井さん、ハイ、般若さん、ハイ、弁吉さん」
損をするのは、私ばかりじゃないか。弁吉は札束を握ると、膝をのりだして、
「よウし。ボクが、もうけてやるよねえ。ハハハア」
「インチキはいけないよ」
お魚女史は凄い一睨みを弁吉にくれて、それから、とたんにニッコリと、片手に二ツ、片手に一つ、ピースの箱をとりあげた。