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おさかなじょし

お魚女史

坂口 安吾

「八雲 第三巻第八号」八雲書店、1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,457 字 · 19 页

青空文庫

を手玉にとってたなんて言いやがんだもの。日本人はダラシがねえんだッてさ。ツマラネエんだそうだネ。だもんでネ、先生がネエ、いくらか変ってるんじゃないかと思ってネ、見物に来たんだそうだよ。手ブラで来やがんのさ。包みをかゝえているからネ、それ手ミヤゲって訊いたらネ、オヒルのお弁当だってさ。動物園にもあきたんだろうネ。アハハ。キチガイかも知れないネ」

と、私の返事など気にかけるところはミジンもなく、悠々ととって返して、女をつれてきた。

「コンチハア」

と部屋の入口で女は奇声をあげたが、キチンと坐って三ツ指をついて、きわめて礼儀正しくオジギをした。

「アハハ。入場料のいらない動物園てのが、あったんだねエ。アハハ」

と、弁吉は悦に入って、

「今ね、日本産の河馬がねェえ、お酒をのむからね、徹夜の催眠薬なんだ。あなた、のむの? ついであげようか」

「この子、キチガイなんですかア。先生」

と云って、女は私にニッコリ笑いかけた。私はバカらしくなって笑いだしたが、弁吉は大喜びで、

「ボクねえ、松沢病院へタネとりに行ったことがあるんだよ。そしたらさ、患者がねェえ、あっちの窓、こっちの窓からボクを指してさ、キチガイ、キチガイって笑いやがんのさ。