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かやのおいたち

かやの生立

岡本 かの子

「解放」1919(大正8)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,632 字 · 25 页

青空文庫

雑木は多く、くぬぎという質の荒い粗材であって、翌朝早くから下男の吉蔵は、組み立てられた幹と枝との間の一劃に腰台を置いて、鉈という長方形の巌丈な柄の付いた刃物と、手頃な鋸を携えて、白い息を悠々と吐き乍ら、幹は鋸にかけ、枝は鉈で叩いて、この山城屋の一年中の燃料に当つべき雑木を、克明に仕末し始めたのである。

極寒の空の薄曇った雲の間から、折々淡い陽の光のもれて来る午後など、かやは吉蔵と世間ばなしをしたりする婆やの傍に、しゃがんで、手際よく、二尺程の丈に截たれた幹や枝が、また縄に結ばれて、小さな束になって、吉蔵の背後や両側に、別な組みになって積み立てられるのを、じっと熱心に見入って居ることがよくあった。

截られて居る雑木の大部分を占めて居る大人の拳位な太さのくぬぎの木肌は、誠実な労役を経た、老いた農夫の掌の様な、ひびだらけな上皮の、暗紫色へ、ほろほろ、と白い浮粉が吹き交ざった様な枯淡ななつかしみをかやに与えるのであった。

雑朶と云って、吉蔵が無雑作に取り扱うくぬぎの下積みの枝などには、滴り透った霜どけの水に、ぐっしょり、濡れ乍ら半分朽ちた、しゃりしゃりした葉が付いて居たりした。