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かやのおいたち
かやの生立
岡本 かの子
「解放」1919(大正8)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,632 字 · 25 页
二
というかすかな好奇心が交って、夢の様なぼっとした気持で、この被布の姿のお祖母さんを見るのであった。
お祖母さんが最後に
「よいとな」
と大きく調子をとって、車台へ登ると蹴込みに敷いてある獅子の毛皮のようなもじゃもじゃした布の上に「つぁらっ」と擦れる音がして、新らしい後歯がかすかに刷毛でのべた様な赤土のあとをつけた。「由」が轅棒を上げて走り出すと、いつの間にか皆のうしろに来て居た老犬のくまが、わん、わん、吠えてあとを追った。俥の背にくまの姿が横にひしゃげて、ちんちくりんに写った。俥の影が見えなくなると、この古い宿場の往還も、にわかに幅広く見渡せて、霜の溶け沁みた路上の土に、近くの村落から集まって都の方へ通って行く荷車の軌の跡が、幾筋も続いて居た。
二
お媼さんの俥も、やはりお爺さんの時と同じ方角へ向うのであった。かやは、とっとと走って行って裏門の扉につかまって停った。土蔵の横を曲ったお媼さんの俥が、邸をめぐった長い珊瑚樹の生垣に添って走り尽すと、やがて、茫としてつきる処が見えぬほど、広く続いた耕地の中心を一直線に専断した平坦な県道に、敏捷な、軽快な姿を現わすのであった。