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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
この辺は一帯に人気の悪いところでしてね、旅の者と見ると随分酷いことをしたものです。宿屋と船頭が共謀になっていて、宿屋では煮えづくしの飯を出し、船頭は『舟が出ますよ。舟が出ますよ』と火のつくように呼ぶでしょう。迚も喉へ通ったものじゃありません。後から聞きましたが、彼処の宿屋は何処もあゝいう風にして飯を食わせない仕掛になっているのだそうでした」
間もなく遙に玩具のような城が見えて、桑名に着いた。成程、
「名物しぐれ蛤!」
と売子が呼んでいた。
「一の鳥居は桑名にあると申してな、跛足を引き/\こゝまで来ると、ホッと一息ついたものですよ」
と当年の抜け詣りは汽車が動き出すと共に又話し始めた。
「一の鳥居から本殿まで三日も四日もかゝるんですね?」
とお父さんが訊いた。実に調法な道連れが出来たものだ。僕達はこの老人のお蔭で車窓に現場を控えながら半世紀前の伊勢詣りの模様を詳にすることが叶う。
「こゝから二晩、足の弱いものは三晩泊りでしたな。昔は伊勢参宮が冠婚葬祭に次ぐ大切の行事になっていましたから男は一遍は是非来たものです。一つはこれで若い者が世間を見るという仕掛になっていたのですな。