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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「否、商売は不景気以来全く閑だ。無理にやれば損をするばかりだから、万事手控えという形だけれどもね」

「それなら丁度誂え向きじゃないか? 行こうよ。君の郷里へも寄るよ。君は名古屋辺だったね」

「名古屋さ。名古屋も市中だ」

「それじゃ『笹島駅から三丁目』かい? 『一軒置いて二軒置いて三軒目』だろう? 『名古屋へ入りゃあたら寄て頂戴も』は何うだい?」

とお父さんが節をつけて言うと、

「おや、妙なことを知ってるぜ!」

と団さんは怪んだ。

「行きゃあすか、置きゃあすか、何うしゃあすか? 一寸も埓明かんとぐざるぜも。行こうよ」

「聊か驚いたね。何処で修業して来たい」

「君、こんなことは朝飯前だよ。僕等は建築家と違って、居ながらにして名所を知る組だ。方々珍しいところを見せて上げるから黙って跟いて来給え」

とお父さんは大きく出た。

「さあねえ、僕も生命は惜しいからね」

と団さんは相手にならない。

「アフリカへでも行きはしまいし、何の危険なことがあるもんか」

「否、アフリカなら案内人を頼むけれど、なまじ言葉の通じる日本だけに、却って始末が悪い。考えても見給え。数理の観念のない君と方角の観念のない三輪君に引き廻されるんじゃ、何処へ行くか何時帰れるか分ったもんじゃないよ」