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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「そんなに場所までちゃんと知っていながら君は黙っていたのかい?」
と三輪さんは逆撚じに出た。
「理窟を言うぜ。承知で黙っていた次第でもないが、実は君の蝙蝠傘には東京駅以来尠からず辟易していたのさ。だって君は田舎漢のように蝙蝠傘を担ぐ癖があるだろう。そうして改札口では吃度僕を押し退けて先へ出るから目を突かれそうで危くて仕方がない。奈良以来不思議に苦労がなくなったと思っていたら品物がなくなっていたんだね」
「結果だけに満足して原因を究めなかったんだね。ぼんやりしているぜ」
「恐れ入った。斯ういう先生にかゝっちゃ迚も敵わない」
と団さんはもう相手にならなかった。
「蝙蝠傘は掏られる。万年筆を掏られる。一ダース持って来たハンカチもこれ一枚になってしまった。旅行は実際油断がならない」
と三輪さんは忘れたり落したりして失した物を悉皆掏摸の所為にした。
「時に何うするね? 雨を冒して嵐山へでも出掛けるか? 待っていたって何うせ止まないぜ」
と今日の案内役の星野牧師が欠伸をした。
「然うさね。能く降る雨だなあ」
とお父さんは煮え切らない。
「大人連中は馬鹿ばかり言っているから宜いけれど、子供衆が退屈だぜ」