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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

八ツ橋に五色豆、蕪の千枚漬にすぐき漬ぐらいのものさ」

と霊の糧を扱う星野さんは肉体の栄養物に興味を持っていないらしい。停車場の売子の呼声をその儘取次いで呉れた。

見限っていた天候が昼から恢復し始めたのは何よりの仕合せだった。空模様ぐらい人間の無定見を暴露するものはない。傘を持たないで出掛けた場合一寸怪しくなって来ると一生取り返しのつかない大失敗をしたように思い、又晴れそうになると今度は元来自分に先見の明があったように感じる。先刻まで一日丸潰れと覚悟を定めていた僕達も、雲間二三尺の青空に恐ろしく慾の皮が突っ張って来た。昼前の損失までも償おうという意気込みで団さんが自動車を急がせたこと! 北野の天満宮へ差しかゝっても、

「京都へ来てこんなものに一々敬意を表していた日には一月かゝっても足りないよ」

と断って素通りをしてしまった。

間もなく金閣寺に着いた。大木好きの三輪さんは一位の木というのに感心して、僕達が上り込んでも未だ空を仰いでいた。案内人は早速庭石や古道具の名前を朗吟し始めたが、例によって見せるよりは通り抜けるのが目的だから、舟形の松と、昔塔の上にあったという鳳凰の像ぐらいしか頭脳に残っていない。