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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「時に、君、家内の目は何うだね? 余程出ているだろう?」

と少時してから小川さんは話頭を転じて、質問の方へ廻った。

「え?」

とお父さんは解し兼ねた。

「僕のところの妻の目さ」

「細君の目?」

「然うさ。実はバセドウ氏病という厄介な奴に罹っているんだが、気がつかなかったかい? 朝鮮金魚のようだろう?」

「然う言われゝば成程少し出目過ぎるようにも思ったが、病気かね?」

「甲状腺が腫れて目がダン/\繰り出して来るゴイトルという奴さ。殆んど女に限るところを見ると苦労性の病気だね。それに家の奴のはヒステリーが大分手伝っている。気むずかしくて困るよ」

「それはいけないね。君が余り苦労をかけるからじゃないかい?」

「その辺もあったかと思ってこの頃は身を持すること甚だ謹厳だよ。そうして万事御台所本位で御機嫌を取っている。妻め悉皆増長してしまって宛然女王だね。大きな目をして婆さん染みたところはトランプの女王に能く似ているだろう」

と小川さんは奥さんの棚下しに努めた。何だか何処かでお目にかゝった顔だと思ったらトランプだったか。然う言えば成程少し似ている。

「圧迫を加えられると見えて酷く反感を持っているね」