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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「可笑しいんでございますよ。最初主人は私が睨むと申すのでございます。私は睨みも何も致しませんのにね」

と病気の起り初めから話し出した。

「成程、大将幾分身に暗いところがあったんですな」

とお父さんは笑いながら相槌を打った。

「然様でございますよ。その翌晩も亦私が睨むと申すのです。昨夜は自分が悪かったが、今夜は交際で晩くなったんだから、そんなに怖い顔をしないでお呉れと申すのです。けれどもその実私は睨んだのでも不機嫌だったのでもございません」

「面白いですな」

「今考えて見ますと最早その頃には目が大分出て来ていたのでございますね。けれども私も気がつかず主人も唯睨む/\と思い込んでいますから、『お前はこの頃は朝から機嫌が悪いね。何か腑に落ちないことでもあるなら腹蔵なく言ってお呉れ』と申すのでございました。そうして終には店が引けると直ぐに帰って参るようになりました。お蔭で意見一つ申上げないのに主人の身持が直ったのでございます」

「大成功でしたな」

「けれども同時に私は二階へも上れないほど息切れがするようになりました。余り苦しいのでお医者さまに見て戴きますと、この通りの病気でそれも最早大分嵩じているとのことでございました」