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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

とお父さんが冗談を言った。

「然うです。そうしてこの叔父さんがその石炭屋です。御覧なさい。こんなに太っている」

と川島さんは布袋腹を叩いて見せた。

小倉を過ぎると右側は煙突の森林続きだ。煤煙で空が曇っている。

「実際盛んなものですなあ!」

と団さんが感歎した。

「此処は工業地として東洋一という評判です。その代り煤煙で家があんなに真黒になってしまいます。八幡は雀まで黒いと申しますからね。桜だって満足な色には咲きません。女にしても白粉を塗っている間に煤煙を受けますから折角のお化粧の出来上る頃には灰色になるそうです」

と川島さんの説明は形容に剽軽な誇張があるから印象が深い。

「太っ腹な男さ。あんな風だから損をしても得をしてもケロリとしている。成功しているのか失敗しているのか分らない」

とお父さんは折尾で川島さんが下りてから批評した。

「快活で好いね。不平や苦情は痩せた人の言うことさ」

と団さんが言った。

「妙なところで当てつけるね」

と三輪さんは聞き捨てにしなかった。

「そら、もう始まった」

九州で大きいのは福岡、町の綺麗なのは長崎、繁華なのは博多――と昨夜散歩をしながら、三輪さんの甥の大学生が定義的に教えて呉れた通り、博多は実際賑かだ。