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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
『昔はこぎゃんした晩には蒟蒻の化物が出おったばってんこの節は世の中が開けたけん』と言いながら、この向う通りを歩いていますと、『にゃごとこくきゃあ!』と楠の木の上から大声がして、一丈余りの蒟蒻がだらりとばかり雨傘の上へ。ハッハヽヽヽヽ。大の男が三人傘を捨て下駄を脱いで、命から/″\……ハッハヽヽヽ」
と男衆は痛快に笑った。
「何かね、その蒟蒻には目鼻でもついているのかね?」
とお父さんは化物の正体を突き止めたかったが、青年は、
「否、蒟蒻じゃけん、目も鼻もござッせん。唯いきない頭の上へ……いきない頭の上へだあいと……ハッハッハヽヽヽヽ」
と未だ腹を抱えていて呂律が廻らない。何がそんなに可笑しいのだろう? 元来が蒟蒻で、それが化物と来ているのだから到底要領を得難かった。
「蛮人のユウモアは粗笨な代りに自然で雄大なところがある。蒟蒻の化物は荒削りで面白い」
と言ってお父さん丈けは喜んだ。
公園へ出て銅像を見た。
「閑叟公でございます。此方のは公に殉死をなされた古川松根翁です」
と男衆は改まって案内役を勤めた。
「まあ、殉死!」
と田鶴子さんが暗い顔をした。無駄口の多い連中も流石に黙りこくって、この葉隠れ武士の典型に深い敬意を表した。