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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

兎に角この謙一ぐらいの頃で中学へ入りたてだった。昼休みに散歩に出掛けたが、そう/\一緒だったね、入ったばかりだから他に友達はなかった筈だ」

とお父さんは二十五六年前に遡って、

「散歩に出掛けたが、帰りに道が分らなくなってしまった。幸い交番があったから、『学院は何処ですか?』と訊くと、巡査は怖い顔をして睨むばかりで教えて呉れない。又訊くと、『こら、人を馬鹿にするな! お前達は学院の徽章をつけているじゃないか?』と来た。吃驚して半町ばかり逃げたが、ひょっと見るとそこが学校の裏門さ。ねえ、三輪君、あれは巡査の怒ったのも有理だよ」

「その時分から好い相棒だったんだね。然ういう西も東も分らないのが二人ぎりで出掛けようとしたんだから、度胸が好いさ」

と団さんは最早相手にならずに新聞を拡げて読み始めた。

少時するとお父さんは不図思い出したように先刻田口さんから頼まれた新聞包を網棚から取り下した。僕は何が入っているのだろうかと種々臆測していた矢先だから、覚えず乗り出した。内からは張子の虎が一匹現れた。可なり大きい。頻りに首を振っている。近辺の旅客の注意は忽ちこの異様な携帯品に集まった。