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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「今通ったのが目貫きの町筋で、こゝが千本浜公園です。沼津は先ずこれくらいのものですな」

と仙夢さんが言った。恐しく簡潔な案内役だ。停車場から此処まで物の十分とは経っていない。東路に爰も名高き沼津の里も是でもう見物が済んでしまったのかと僕は全く拍子抜けがした。

「お疲れでなければ直ぐに三島へ出掛けましょうか?」

と仙夢さんは動もすると立ち上りそうになる。余程性急だ。休憩させた以上は疲労を認めている筈だのに、催促の積りか知ら?

「三島までは余程かゝるかね?」

とお父さんが訊くと、

「急げば往復三十五分です」

と答えて、仙夢さんは矢張り今しがたの流儀で引き廻す料簡らしい。

「まあ/\見物旅行だから、ゆっくりやろうじゃないか」

と団さんが若し言わなかったら、僕達はすぐ三島へ連れて行かれてしまうところだった。

千本というだけあって浜伝いは見霞む限り松原だ。それも生やさしいものでなく、三抱えもありそうなのが、潮風に揉まれる為めか、あらゆる気紛れな形をしている。田子浦辺まで続いていると仙夢さんが説明してくれた。のたり/\の波の長閑な春の海面を愛鷹山の上から富士が覗いている。