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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

芳江のところでは博士になりましたしね。私、黙っていても実際気が気じゃありませんよ。それをお父さんは少しもお察しなく、私の顔を見ると何時も、『愚迂多羅兵衛は相変らずのらくらしているかい?』とお訊きになるじゃありませんか?」

お父さんはお母さんと話をする時には里のお祖父さんのことを鬼瓦々々と言う。その返報かお祖父さんの方では僕のお父さんを愚迂多羅兵衛と呼んでいるらしい。こう綽名をつけて茶化し合っていてもお父さんとお祖父さんはお互を能く理解している。現に婿の中では謙一の親父が一番話相手になると言ったことが二度あるとか三度あるとか、お母さんが指を折って数えていた。それは兎も角、鬼瓦の方から碁の客が来ているからと小僧を寄越すこともあれば句会があるからと言って愚迂多羅兵衛の方から僕が使者に行くこともある。囲碁では外舅殿がお師匠さんで、俳句ではお婿さんが宗匠らしい。まず以て申分ない舅婿の関係を保っている。なお筆の序だから説明して置くが、自動車の秋子叔母さんと博士の芳江叔母さんというのはお母さんの妹だ。妹思いのお母さんはこの二人の配偶がそれ/″\発展成功して行くのを喜ぶと同時に、兄弟は他人の初まりといって自然競争心があるから、お父さんの煮え切らないのを歯痒がるけれども、お父さんは相変らず晏如として愚迂多羅兵衛を極め込ん