轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

背の赤ちゃんは近所の農婦の子らしい。畑仕事が忙しいので、ちょっと誠一に頼んだのだろう。

私の胸にぐっと来たものがあった。世が世であれば大学教授の坊ちゃんで、子守の手伝いを頼まれるはずがないのだが……。

ところが本人の誠一はなんのくったくもなく、いと朗らかに赤ちゃんをあやしながら、大声をはり上げている。習い始めの英語がよほどうれしいと見える。

「シー イズ メリー ブラウン。シー イズ マイ シスター……」

――その情景を見ているうちに、私の心は次第に反省をしはじめた。――世が世であれば、などとすぐに感じたところに、まだ私が特別階級の意識を捨て切らずにいた証拠がある。農民の子と教授の子との間に人間としてなんの差があろう。もし社会的な価値から言うとすれば、麦の土入れをするのに忙しい農民のほうが、床に就いたきりの前教授より貴いではないか? 農民が私の子に子守を頼んだことになんの無理があろう。

私たちの一家はどん底に落ちているのだ。私は社会に迷惑をかけているだけである。社会のお役に立つことを何ひとつしていない。したがって、この子も坊ちゃんと言われる身分ではない。