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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
ここに大きな情義がある。石油は乏しくなる。石炭の底は見えてきた。動力源がなくなると共に人類の文明も終わるのではあるまいか? 人類生存の前途には絶望の黒岩が立ちふさがっていた。――その岩をあの原子爆弾は吹き飛ばしたのだった。原子爆弾の吹き飛ばした穴を通して、新しい世界の光が射し出すのを人類は見た。この穴から入って探せば、新しい動力はいくらでも取り出せるぞ、新しい物資はいくらでも引き出せるぞ、という明るい希望が人類の胸に湧いた。万物は原子から成り立っている。そこらじゅう原子だらけだ。この原子の内に神は天地創造以来こんなすばらしい力を隠していたのだ。しかもそれを探し出し、取り出し、利用する知恵も人類に与えてあったのだ。知恵さえ働かせたなら、まだまだほかにもたくさんの動力や物資を探し出すことができるにちがいない。
すべての被造物は人間にサーヴィスするために神から創られてある。せっかく人間の利用するために用意されてあるものを、利用しないで放っておくのは、人間の怠慢だよ。許し難い怠慢だよ。――額に汗して働け、と命じられている。ところが人類の多くの者はどこに汗を流して働いている? 脚に汗しているじゃない? 腕に汗しているじゃないか? 労働は神聖だと言う、それはいい。