轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
百方手を尽くしたにもかかわらず患者が死んでしまうのは、死ぬべくして死んだのであって、医者の失敗ではなかった。医者が患者の生命を助けたとか、治療を失敗して死なせてしまったとか言うのは、医者の高慢である。身のほど知らずと言うべきものだろう。
神は「なんじらのうちだれか工夫して己が寿命に一肘でも加うることを得んや」と言っておられる。どんなに工夫したって、人間の力で寿命を一尺でも延ばすことはできないと、はっきり言われているじゃないか。一羽のすずめでさえ神の思し召しがないかぎり、地に落ちることはない。まして貴い人間の生命――これは、それを創った神の思し召しのままになる。医者の力では歯が立たぬよ。
それでは医者はなんのために患者の手当てをするのか? と聞きたいだろう。
医者の仕事は病人と共に苦しみ、共に楽しむことだ。病人が腹の痛みに苦しんでおれば医者もいっしょに苦しんで、さてどうしたらこの苦しみを軽くしていただけるかとそれを念ずる。患者が死にかけて、はらはらしているときには、医者もはらはらして、なんとかして死の手から離したいものだと心を砕く。病人の熱が下がってほっとすれば、医者もほっとする。