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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

たといお金をたくさん孤児院に寄付しても、無料で多くの病人を治療しても、自分の名を世間に知らせ、世間から慈善事業家とか愛の使徒とか言ってもらいたいためにするなら、神の手帳には善と書き留められない。空白のままだ。歴史の上に名を残した英雄・豪傑・芸術家・宗教家・政治家・美人・学者は多いが、そのうち果たして幾人が神の手帳に善と書き留められているだろう? その人たちの多くは自分の名誉のために一生をささげたのであろうから、時間に生きただけで、人間の歴史にはでかでかと書き上げられたが、世界の終わり、時間の終わりと共に跡形もなく消えてしまうであろう。

この一生は天に宝を蓄える働き場である。毎日毎日、毎時毎秒、時間に生きながら、永遠に生きる工夫をせねばならぬ。小さな永遠の宝を積まねばならぬ。絶えず小さな善業を行なって神の手帳に善、善と書き留めていただかねばならぬ。――では、どうしたら小さな宝が作られるか?

為す業が宝となるかならぬかは、それを為す意向で決まる。

「神のみ栄えのために!」

こう念じてすることは、神と直接関係をもつから、永遠である。どんな小さなことでも――わらくず一本拾うことでも、路の小石を一つ除けるのも、のびた爪を切るときも、神のみ栄えのためにするならば、神は善と見たもうのである。