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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

夜が明けてみたら修道女がひとかたまりになって、冷たくなっていた。……ゆうべの賛美歌はこの修道女たちが歌っていたのであろうか? それとも霊魂を迎えに降りてきた天使の群が歌っていたのではなかったろうか? ……そう思わずにはおられない、きよらかな死に顔が並んでいた。

それを見た生き残りの私たちは、原子爆弾は決して天罰ではなく、何か深いもくろみを持つ御摂理のあらわれにちがいないと思った。

――私も同じ日、無一物の弱り果てた者となって、幼い二人の子をかかえて焼け跡に立たされたのだが、これは何かは知らねど、愛の摂理のあらわれである、と信じて疑わなかった。

それから三年の月日をしのいで今日に至ったが、あの日の私の信仰が正しかったことが次第次第に証明されてくる。

原子爆弾によって私の正しい道をはばんでいた邪魔が取り除かれ、私は真の幸福を味わうことができるようになったのである。

やがて私を訪れる「死」もまた、限りなき愛にまします神の私に対する最大の愛の贈り物であろう。それゆえ、死の前に通らねばならぬ心の悩みも体の苦しみも、神のみ栄えのあらわれるために必要なものとして、悦んでこれを受けようと思っている。