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このころのこうたいしでんか
この頃の皇太子殿下
小泉 信三
「文藝春秋」文藝春秋新社、1959(昭和34)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,512 字 · 9 页
。こういう情景は「ジョージ五世伝」中にも描かれているのである。
「ジョージ五世伝」のことは別に書いたこともあるが、五百三十ページの本が、何時かあと四五十ページをあますのみとなった。この伝記は、そのもの自体が十分読むに値するものであるばかりでなく、書中の記述が政治外交、また、国王と皇后、皇室と国民、皇族相互の関係等について、殿下とお話をする端緒をたびたび与えるので、私にはまことに好都合な本である。多分殿下もそれをお認めになることであろう。
皇太子殿下がこの「ジョージ五世伝」を注意深く読んでお出でになることは、色々の事実によって示されている。或るとき私は殿下に、この伝記についてのレポート御提出を課したことがある。そのレポートの一節は、特に印象を与えたので、今も私の記憶にのこっている。殿下は英国近年の名君といわれたジョージ五世及びジョージ六世が、ともに第二皇子として、比較的目立たぬ皇子時代を送ったことに注目せられ、このことが、この両王の成長によい影響を与えたのではなかろうかといわれるのである。殿下の御見解は大体次のようなものであった。
ジョージ五世はエドワード七世、当時の皇太子の第二皇子で、彼の兄クラレンス公は一つ年上であったが、クラレンス公は一八九二年二十八歳でなくなり、ジョージ親王は一九〇一年ヴィクトリア女王