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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと

さまよう町のさまよう家のさまよう人々

国枝 史郎

「探偵」1931(昭和6)年7月~11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,916 字 · 75 页

青空文庫

自分の部屋へ帰って来て、ソファーへ腰かけて煙草を喫ったものです。

問題は今のところ簡単であり、探偵小説にあるような、複雑性などは無いのですから、考える必要も無かった訳です。

(要するに度胸の問題さ)

そんなように私は思いました。

(危険性はうんとあるが)

それは相手が青幇なのですから、命がけと云わざるを得ませんでした。

その夜私は十二時頃寝ました。

何かの気配を感じたのでしょう、私はフッと眼をさましました。

すぐに電気をつけて見ました。

卓の上に一枚の紙があり、その紙に字が書いてありました。

「柵家の事件より手を引かざることは、

貴下の生命を失うことなり。

青短剣」

斯ういう意味の文章でした。

(早速彼奴等やり出したな)

私はそう思って苦笑しました。

見れば裏庭に面している窓の、一枚の硝子が切り取られています。

青幇の一人が忍び込んで来て、そんなことをしてそんな紙を、卓の上へのっけて行ったのでしょう。

(ピストルで俺を殺そうとしたら、すぐにも俺は殺されたろうな。硝子を切り取った窓の穴から、手を差し入れて俺を射たら)

だから危険だと思いました。