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さまようまちのさまよういえのさまようひとびと
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
国枝 史郎
「探偵」1931(昭和6)年7月~11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,916 字 · 75 页
うか? それを探り度い為めからでした。彼等が、わけても会長が、催眠術を使うということ――そうしてその使う催眠術の一種、遠隔暗示で柵家の令嬢、初枝さんを精神喪失者とし――特に夜に於て夫れにして、八月二十日には以前に死んだ、二人の姉さんと同じように、無意識に、しかし自分の方から、死場所を目指して進んで行くように――そうしているということなどは、私は推察していたのでしたから、敢て地下室で探ろうなどとは、計画しては行かなかったのでした。
そうして地下室へ這入って行った結果、会長の人物は見ましたが、何者であるかという点は――その素性という点は、結局知ることは出来ませんでした。その上何が故に柵家へ、青幇の連中がそう迄執念く、仇をするかということに就いても、発見することは出来ませんでした。
が、その代り「何ういう処で」初枝さんを殺そうとしているか? その「処の」暗示だけは、ゆくりなくも知ることが出来ました。
「処」とは何処か?
云う迄も無い!
「さまよう町の、さまよう家の、さまよう人々」の中なのです。
が、其処は何処なのか?
そうだ、其処は何処なのか?
知らなければ不可ない! 知る必要がある! そうだ探す必要がある!