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しじみがし

しじみ河岸

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,438 字 · 51 页

青空文庫

子供らしくない嘲弄の笑いであった。律之助は口をつぐんだ、するとその子がまた云った。

「おじさん役人だろう」

律之助はその子を見た。

「なんの用があるのか知らねえが気をつけたほうがいいよ」とその子が云った、「この辺の者は命知らずだからね、役人なんかがうろうろしてると、なにをするかわかったもんじゃねえ、本当だぜ」

「本当だぜおじさん」とべつの子が云った、「ほんとに足もとの明るいうちにけえったほうがいいぜ」

律之助は苦笑したが、心の中ではすっかり戸惑い、そしてこみあげる怒りを抑えるのに骨を折っていた。

――この子供たちを怒ってはいけない。

彼はそう自分に云った。

――子供たちに罪はない、こいつらは自分の云っていることを理解していないんだ。

彼はふところから銭嚢を取り出した。子供たちはぴたっと口を閉じ、眼を光らせて彼の手もとを見た。彼は文銭をあるだけ出して、さきの子供の手へ与えた。

「みんなで菓子でも喰べろ」と律之助は云った、「おじさんは役目でしかたなしに来たんだ、あんまりいじめないでくれ」

子供は不信の眼つきで、すばやく、ぎゅっとその銭を握った。

そのとき向うで「伝次」