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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页
わたくしは家内の常識的な疑問に対してそう答えながら亡児たちの幽界からの消息を能く感得し、幽界で成長している彼等の姿を好んで人々に語ったがため、時に狂気のように云われていた晩年の土井晩翠の心事をわたくしはよく理解した。また泉鏡花の未亡人が亡夫の幽界の生活をつぶさに語っていたことをも思い出し、そうしてわたくしは云い足した――、
「彼女はきっとお兄さんの結婚をお祝いにでて来たのだよ。古来、何か祝い事のある毎に必ず姿を見せる一族の守護みたいな亡霊の例は昔の本にも出ているから」
甥の結婚式に列席のため上京してわたくしの家にいた家内の妹というのは、日ごろ霊力があると自称して少々神がかりの巫女的な女であるが、わたくしの話を聞いて、
「それとも女の子だから、兄さんのことばかりではなく、わたしのことも少しは思い出して下さいと云って来たのかも知れなくってよ」
「あの子のことなら」とその母親は一目も見も知らない亡児のことをそう云って「毎朝、家の仏さまを拝む時に必ず忘れないで一緒に拝み祈ってやっているから、今さら思い出してほしいなどとは云って来ますまいよ」
「それじゃ、やっぱりお祝いに来たのね」