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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
佐藤春夫『たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:あじさい、幽香嬰女伝、化物屋敷、緑衣の少女、私の父が狸と格闘をした話、幽明、柱時計に噛まれた話。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,277 字 · 84 页
一部分を提供していることまで追々とわかって来た。弟の家の食客をやめた自分は、こうして自分の弟子と自称する一団の青年たちの同宿人になっていたわけである。姉はと聞いてみると、荷物の整理のため一両日は止宿していたが、それも片づくにつれて退屈になったらしく、自分の帰京を待ちくたびれていたのがいつ帰るやら当にはならないというので一昨晩自分の電報がとどくほんの少し前に帰郷してしまったという事であった。
自分は青年たちに促されて渋谷の駅に下車した。その素人下宿というのはこの場末の三業地の一隅にあるのだという事であった。絃歌湧くが如きなかに、北に筑波を西に富士を見晴す宏荘な三層楼だという石垣の説明は口調に少々道化があったけれども行って見るに及んで大して誇張のないものに思えた。一間の硝子戸を二枚入れた入口からそれにつづく二坪の土間、式台にまがう上り框につづく廊下の広さなど、一目見るなり場所柄当然料理屋として建てた家とわかった。自分の部屋は二階だというから先ず自分の部屋を見ようと二階へ急いだ。入口の左手の壁に沿うて見える階段を上ろうとして自分は何故か先ずこの階段が面白くないと思った。