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だだらだんべえ

だだら団兵衛

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1932(昭和7)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,271 字 · 25 页

青空文庫

弥九郎が出てみると、面を蔽した武家の女房らしいのが、七歳あまりの娘の手を曳いて立っていたが、潜戸の明くのを待兼ねてつと内へ入り、うしろざまに戸を閉めて、

「これを多々羅様に!」

と云って一通の書面を渡した。

「いずれから?」

と訊くと、

「どうぞ御覧に入れて――」

と四辺を憚るようす、仔細ありげだから急いで主人の居間へ持って行った。団兵衛が受取って見ると差出人は『南』という一字。

「はて――」

封を切って読むと。

至急。妻子しばらく御匿い願入る。脱れ難き寃罪にて暫時退国仕る。寃罪晴れ次第帰国。それまで。

南部八郎太白

多々羅団兵衛殿

よほど急いだとみえて言葉も尽さぬ走書だ、しかしその文面には頼みきった八郎太の気持が滲出ていた。

「そのかたを急いでお招き申せ!」

「はっ!」

まろぶように出て行った弥九郎は、すぐに八郎太の妻と娘を導いて来た。

「深夜に、お騒がせいたしまして――」

と手をつくのを遮って、

「いやそのまま、委細は書面で承知いたした、御不自由でもあろうが、当家におられる内は安泰に思召せ、必ずお匿い申上げる!」

と頼もしく云って、早々奥まった一室に仕度をさせ、弥九郎にも厳重に他言を禁じて、母娘の者を匿まった。