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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

ような生活をしていること、いまでも木戸の番士によって、罪人同様に監視されていることなど、――どこまでが事実かは知らないが、古い物語でも聞くように、半ば哀れで半ば恐ろしいような印象が残っている」

こんど江戸へいっているあいだに、その部落のことを思いだした。帰国したらぜひいちど調べてみようと考え、他藩にそういうことがあるかどうか、手蔓を求めて捜してみたところ、二三の藩で似たような例のあること、また現在それがどう扱われているかということもわかった。

「この藩では約三十年まえから、流人村へは流人を送っていない」と隼人は続けた、「とすれば、現在そこに住んでいるのは罪人ではなく、その子か子孫ということになる、それらがいまだに流人村にとじこめられて、けもののような生活をしているとすれば、それが事実だとすれば捨ててはおけないだろう」

「そのことはおれも知らない」帯刀は疑いを解いたように肩をゆすり、「――だがそれは」と念を押すように云った、「本当に西沢とは関係がないのだろうな」

「みていればわかる」と云って隼人は微笑した、「彼とはまったく関係のないことだよ」

帯刀は義弟の顔をみつめた。