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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

これらの建物は多く杉の丸太が使われ、柱も太く、二重の板壁も厚板であり、天床も太いがっちりとした梁木がむきだしに見えた。ぜんたいがおそろしく頑丈に造られているのは、冬のきびしい風雪や、寒気を防ぐのが目的で、窓も戸口も狭いうえに小さく、屋内はいつもうす暗く陰気であった。――役所にも長屋にも「炉の間」というのがある。十二帖ほどの広さで、六尺四方の大きな炉が切ってあり、煖をとるのも、食事をし茶を飲むのも、すべてそこですることにきめられていた。二十余年まえに、番士の部屋で火の不始末から、危なく火事になりそこねたため、その後は「炉の間」以外に火を置くことを禁じられたのであった。

隼人は休んでいるあいだに、流人村の記録を詳しく読んだ。同じものは町奉行所にもあるが、それは報告する必要のある件だけで、こちらはその原本であるため、記事は煩瑣なくらい詳細に綴られていた。

城下から初めて流人が送り込まれたのは、約百四十年まえのことで、その制が廃止された三十年まえまでに、流罪になって来た者の数は八十七人であった。女囚も五人あったが、このうち一人は病死、他の四人は三年から五年のあいだに、罪を解かれて山をおりていた。