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しゅんきんしょう
ちくま日本文学014 谷崎潤一郎
谷崎 潤一郎
谷崎潤一郎『ちくま日本文学014 谷崎潤一郎』。同一底本的分册已合并为一书。收入:春琴抄、吉野葛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,196 字 · 169 页
この飼桶の障子には紫檀黒檀などを用いて精巧な彫刻を施したりあるいは蝶貝を鏤め蒔絵を描いたりして趣向を凝らし中には骨董品などもあって今日でも百円二百円五百円などと云う高価なのが珍しくない天鼓の飼桶には支那から舶載したという逸品が篏まっていた骨は紫檀で作られ腰に琅の翡翠の板が入れてありそれへ細々と山水楼閣の彫りがしてあった誠に高雅なものであった。春琴は常に我が居間の床脇の窓の所にこの箱を据えて聴き入り天鼓の美しい声が囀る時は機嫌がよかった故に奉公人共は精々水をかけてやり啼かせるようにした大抵快晴の日の方がよく啼くので天気の悪い日は従って春琴も気むずかしくなった天鼓の啼くのは冬の末より春にかけてが最も頻繁で夏に至ると追い追い回数が少くなり春琴も次第に鬱々とする日が多かった。いったい鶯は上手に飼えば寿命が長いものだけれどもそれには細心の注意が肝要で経験のない者に任せたら直き死んでしまう死ねばまた代りの鶯を買う春琴の家でも初代の天鼓は八歳の時に死しその後しばらく二代目を継ぐ名鳥を得られなかったが、数年を経てようやく先代を恥かしめぬ