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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

そう云って立上りながら、博士はつけ加えた。「この事件には、教えられるところが多々ありますよ……誰でも、気をつけなければいけません……」

三

精神病院を引きあげた吉岡司法主任は、それでも何故か気持が楽だった。

松永博士の教えに従えば、脱走した狂人が一般人へ対して暴行すると云う危険性が、いくらかでも緩和されたわけだ。三人の狂人、或はその内の一人は、もう他人を傷付けることよりも、まず抜き取って来た「先生」の脳味噌を、自分のそれと取替えることに夢中になっているのだ。だが、なんと云う気狂いじみた恐ろしいことだ。

吉岡司法主任は、一つの不安が去った代りに、もう一つの別の恐怖に冷汗をかきながら、本部に収ると、やっきになって捜査の采配を振りつづけた。

だが、流石に専門家の鑑定は見事に当って、やがて司法主任の努力は、段々酬いられて来た。

まず、その日の夕方になって、脱走狂人の一人「歌姫」が、とうとう火葬場の近くで捕えられた。松永博士の推断通り興奮の鎮まった「歌姫」は西の空が茜色に燃えはじめると、火葬場裏の雑木林の隠れ家から例のせつなげなソプラノを唄い出したのだ。