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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

「おやッ」と紳士が乗り出した。「あんなところにも走ってるね? ひどくハイカラな奴が……いったいなに様だろう?」

「箱根の別荘から、熱海へ遠征に出た、酔いどれ紳士かなんかでしょう」

運転手が投げ出すように云った。

「追馳けてみようか?」

「駄目ですよ。先刻からやってるんですが……自動車が違うんです」

紳士は首を屈めて、外の闇を覗き込んだ。――急に低くなった眼の前の黒い山影の隙間を通して、突然強烈な白色光が、ギラッと閃いて直ぐに消えた。紳士はなにやら悲壮な尊い力を覚えて、ふと威儀を正した。

その瞬間のことだった。不意に自動車がスピードを落し、ダダッと見る間に彼は前のめりになって、思わず運転手の肩に手を突いた。――急停車だ。

二

見れば、ヘッド・ライトの光に照らされて、前方の路上に人が倒れている。首をもたげてこっちへ顔を向けながら、盛んに片手を振っている。

運転手はもう自動車を飛び降りて馳けだして行った。紳士もあたふたとその後に続いた。倒れていたのは、歳をとったルンペン風の男だった。ひどい怪我だ。

「……いま行った……気狂い自動車ですよ……」