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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

「いま、クーペに逢ったろう?」

徐行しながら運転手が、向うの同業者へ呼びかけた。

「逢ったよ。有料道路の入口だ!」

そう叫んで、笑顔を見せながら、新婚車は馳け去って行った。

間もなく有料道路の十国峠口が見えだした。

電燈の明るくともった小さな白塗のモダーンな停車場の前には、鉄道の踏切みたいな遮断機が、関所のように道路を断ち切っている。

その道の真中に二人の男が立って、遮断機の前でなにやらしていたが、自動車が前まで来て止まると、その内の一人は事務所を兼ねている出札口へ這入って行った。

紳士は真ッ先に飛び降りて、出札口へ馳けつけた。そして蟇口から料金を出しながら、切符とは別なことを切り出した。

「いま私達より一足先に、クリーム色の派手なクーペが通ったでしょう?」

「通りました」出札係が事務的に答えた。

「どんな男でした? 乗ってたのは……」

「見えませんでした」

「見えなかった? だって切符を買いに来たでしょう?」

「いえ、来ません。あれは大将の自動車です」

「なに、大将?」紳士は急き込んだ。

「はい」事務員は切符に鋏を入れて出しながら、「この会社の重役で堀見様の自動車ですから、切符なぞ売りません」