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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

「いま熱海にいるのかね? 堀見氏は」

「さア、そいつは存じませんが……とにかく、車庫つきの別荘ですよ」

紳士は煙草に火をつけて、満足そうに微笑みながら、

「一台も自動車には行き逢わなかったね。……もうあのクーペ、いま頃は関所止めになって、箱根口でうろうろしているだろう」

遙かに左手の下方にあたって、闇の中に火の粉のような一群の遠火が見える。多分、三島の町だろう。

やがて自動車は、ゴールにはいるランナーのように、砂埃を立てて一段とヘビーをかけた。直線コースにはいるに従って、白塗の停車場がギラギラ光って見えはじめた。

「おやッ?」紳士が叫んだ。

「いないですね!」同時に運転手の声だ。

全く、道の真ン中には遮断機が下りているだけでクーペの姿はどこにも見えない。そこへ事務員らしい黒い男が飛び出して来て、大手を拡げて道の真ン中に立塞がった。

紳士は飛び下りて、バタンと扉を締めると同時に叫んだ。

「電話が掛ったろう?」

「掛りました」

「それに、何故通したのだ!」

「えッ?」

「何故自動車を通したと云うんだ!」

「……?」

事務員はひどく魂消た様子だ。バタバタ音がして、事務所のほうからもう一人の男が出て来た。