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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

澄子と呼ぶ二十を越したばかりのその女店員は、小麦色の血色のいい娘で、毬のようにはずみのいい体を持っていた。

煙草屋の夫婦喧嘩を真ッ先にみつけたのは、「青蘭」の女給達だった。「青蘭」の二階のボックスから、窓越しに向いの煙草屋の表二階が見えるのだが、なにしろ三間と離れていない街幅なので、そこから時どき、思いあまったような女主人のわめき声が、聞えて来るのだった。時とすると、窓の硝子扉へ、あられもない影法師のうつることさえあった。そんな時「青蘭」の女達は、席をへだてて客の相手をしていながらも、そっと顔を見合せては、そこはかとない溜息をつく。ところが、そうした煙草屋の不穏な空気は、バタバタと意外に早く押しつめられて、ここに、至極不可解きわまる奇怪な事件となって、なんとも気味の悪い最後にぶつかってしまった。そしてその惨劇の目撃者となったのは、恰度その折、「青蘭」の二階の番に当っていた女給達だった。

それは天気工合からいっても、なにか間違いの起りそうな、変な気持のする晩のこと、宵の口から吹きはじめた薄ら寒い西の風が、十時頃になってふッと止まってしまうと、急に空気が淀んで、秋の夜とは思われない妙な蒸暑さがやって来た。