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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

二人の紳士は、さても面倒なことになったと云う様子で、暫く手を揉み合わせていたが、やがて荒々しく室を出ていった。

居残った私達三人の間には、妙に気不味い沈黙がやって来た。が、まもなく夫人は、なにか意を決したように顔をあげると、訴えるような様子で私達へ云った。

「……こんなことにでもならなければ、と思っていたのですが……実は、あの……昨晩から、主人の様子が、いつもと変っていたのでございます」

「と被仰ると?」

私は思わず訊き返した。

「はい、それが、あの……あれはなんでも、ラジオの演芸が始まる頃でしたから、宵の七時半か八時頃と思いますが、その頃から、なにかあったのか急に主人は落着きを失いまして、ひどくそわそわしはじめたのでございます……」

夫人が一寸言葉を切ると、東屋氏が口を入れた。

「失礼ですが、その頃に御来客はなかったですか?」

「ございませんでしたが」

夫人が眉を顰めた。すると東屋氏は、扉の方を顎で指しながら、

「只今の黒塚さんと被仰る方は?」

「あの方のお出になったのは、九時頃でございます」

「ああ左様ですか。ではその前、つまり御主人がそのようになられる前に、御主人と話をされたような御来客はなかったですな?」