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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

そして何日の頃からとなく人々は、D50・444号を、「葬式機関車」と呼ぶ様になっていたんです。

いや、学生さん。

ところがここ二年前の冬に到って、このD50・444号が、実に奇妙な事故に、しかも数回に亙って見舞われたんです。

それは二月に這入って間もない頃の、霜の烈しい或る朝の事でした。

当時一昼夜一往復でY――N間の貨物列車運転に従事していたD50・444号は、定刻の午前五時三十分に、霜よりも白い廃汽を吐き出しながら、上り列車としてH駅の貨物ホームに到着しました。

で、早速ホームでは車掌、貨物掛等の指揮に従って貨物の積降が開始され、駅助役は手提燈で列車の点検に出掛けます――。一方、機関助手の杉本は、ゴールデン・バットに炉口の火を点けてそいつを横ッちょに銜えると、油差を片手に鼻唄を唄いながら鉄梯子を降りて行ったんです。

が、間もなく杉本は顔色を変えて物も言わずに操縦室へ馳け戻ると、圧力計と睨めッくらをしていた「オサ泉」の前へ腰を降ろし、妙に落着いて帽子と手袋を脱り痩せた掌の甲へ息を吹掛けると、そいつで鼻の下の煤を綺麗に拭き取ったんです――これが、機関車の車輪に轢死者の肉片が引ッ掛っていた場合の、杉本の一種の合図、と言いますか、まあ、癖なんです。