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とむらいきかんしゃ

とむらい機関車

大阪 圭吉

大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页

青空文庫

「冗談じゃあない」

洋吉氏が流石に色をなして遮った。「成る程私は、チョコレートが好きです。が、あれは、昨日の午後に、姉と二人で帆走した時の残りものです。昨夜は、僕は黒塚さんと一緒に、おそくから山の手を散歩していたんです」

「ははあ、ではその御散歩中、ひょっと怪しげな人間に逢いませんでしたか?」

「逢いませんでしたよ」

と今度は、いままで黙って巻葉を燻らしていた黒塚氏が乗り出した。

「では、海の上に、白鮫号は見えませんでしたか?」

すると黒塚氏は、口元に軽く憫むような笑いを浮べながら、

「なにぶん闇夜で、生憎薄霧さえ出ましたからね……」

そこで東屋氏も笑いながら、

「お風邪を召されませんでしたか?」

とそれから急に真顔になって、「ところで、大変あつかましいお願いで恐縮ですが、貴方と洋吉さんのお二人に、一寸お体を拝借したいんですが?」

「よろしいですとも……だが、なにをなさると被仰るんです?」

「あの物置の、秤に懸って戴きたいです」

「と被仰ると……いったい又なんのためにそんな事をなさるんですか?」

「ええその、この事件に就いて、少しく愚案が浮びましたので……」

「はて? 少しも合点がいきませんな……我々の体を天秤へ乗っける――?」