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とむらいきかんしゃ
とむらい機関車
大阪 圭吉
大阪圭吉『とむらい機関車』。同一底本的分册已合并为一书。收入:とむらい機関車、死の快走船、気狂い機関車、闖入者、三狂人、白妖、あやつり裁判、銀座幽霊、動かぬ鯨群、寒の夜晴れ、坑鬼。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 186,729 字 · 371 页
いた。そして見る見る内にその色は、ただならぬ異状を加えて行く。最初は、ただ濃い褐色だった海が、瞬く内に、暗い血のような毒々しい深紅色の海と化して来た。
不意に東屋氏が力強い声で始めた。
「これです! この物凄い赤潮です。こいつを深谷氏は恐れていたのです。皆さんもきっとお聞きになったでしょう? 昨晩のラジオのニュースで、黒潮海流に乗った珍らしく大きな赤潮が、九州沖に現れ執拗な北上を始めたと云う事を。そしてそのために、沿海の漁場、殊に貝類の漁場は、絶望的な損失を受けていると云うニュースをですね――。深谷氏もそれを聞いたのです。そしてこの、赤褐色の無数の浮漂微生物の群成に依る赤潮が、真珠養殖に取っての大敵である事を思い出したのです。だから深谷氏は、九州沖からこの附近までの間に於ける黒潮海流の平均速度を、二十四時、つまり一昼夜五〇浬乃至八〇浬と見て、赤潮の来襲を、今日の午後までと、大体の計算をしたのでしょう。そして今日の午後までに、昨日にしてみれば『明日の午後まで』に、真珠貝の移殖を行わなければならない。そこで深谷氏は、用意を整え、下男――実は共謀者の早川を連れて、ひそかに邸を出帆したのです。