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めおとよろい

めおと鎧

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年1月号

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 页

青空文庫

まえから良人のそぶりで、いつかはこういうことがあるものと覚悟をしていたらしい、妻はさしておどろくようすもなかった。「与吉郎どのは、近頃めにたって治部へとりいっている。殿のおためというが、それが本当ならむしろ殿の恥辱でさえあると思う。それとなくご意見をするのがおわかりがないらしい。それでとうとうこういう手段をとった。おそらく菊岡とは義絶になると思うが、そうなった場合おまえはどうする」屋代は良人を見あげて、それはあらためて申上げるまでもないと云った。「だが、もっと悪いことになるかもしれぬぞ」「いかようなことになりましょうとも」と屋代はつつましく答えた。「わたくしは香田家の嫁でござります」きまりきった返辞ではあるが、やはりきめどころをきめたという感じで、孫兵衛は心がおちついた。

与吉郎が石田三成にとりいろうとするのを、どうしてそこまでかれが憎んだかというには理由があった。ごしゅくん左京大夫幸長の父は、弾正少弼長政である。もと織田信長の家臣であり、秀吉とはあい婿の親族であったが、秀吉が関白太政大臣とまで栄達するあいだに、ふたりのあいだがらは必ずしも折合いがよくはなかった。