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めおとよろい
めおと鎧
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1943(昭和18)年1月号
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 12,130 字 · 24 页
長政は二度まで秀吉のために、危くころされようとした。その二度とも徳川家康が調停にたって命はたすかったが、二十余万石の大名としては、ぬぐいがたき屈辱だった。そのうえ、去年秀吉が逝去して間もなく、――浅野長政は、ひそかに徳川どのを討とうと謀略をめぐらせている、という密諜を、徳川家へ通じたものがあった。むろん根も葉もないことだったが、長政としては命を救われた恩があるので、すぐに五奉行の職を去り、武蔵のくに調布の里に隠棲して、二心のないことを証さなければならなかった。そしてこの密諜が、治部少輔から出たものだということは、いまでは知らぬ者がないといってよい。これらの事情を思いあわせると、与吉郎がご主君のためと称してしきりに三成へとりいっていることが、屈辱のうわ塗りであると云っても無理はないだろう。まして、あわよくばおのれの運の踏段にしようという肚があるとすれば、孫兵衛が最悪の場合をも辞さぬ気持を持ったことは、決して不当ではなかったのである。
――なんと云って来るか。そう思って待っていたが、菊岡からはべつになんのたよりもなかった。そして四五日すぎたある日のこと、かれはお召しをうけて、主君幸長の御前へ出た。