轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
らんのはな
らんの花
小川 未明
「真理」1936(昭和11)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,095 字 · 9 页
しかし、それを人間が所有することはできぬものでしょうか? なぜなら、人間が自然をすこしでも私しようとするときは、そこに、こうした思わぬ悲劇が生まれるからです。
ちょうど、春先のことでした。友人を訪ねると、
「これは、故郷から送ってきた、らんの花を漬けたのだが、飲んでみないか。」と、湯に入れて出してくれました。
「らんの花?」
私は、茶わんの中をのぞくと、白いらんの花がぱっと開いて、忘れがたい薫りがしたのです。これを見た、私の胸はとどろきました。
「君、これは、どこのらんかね。」
「故郷の山にあるらんだよ。そこは、南傾斜の深い谷になっていて、らんの花のたくさんあるところだ。嶮しいから、めったに人がいかないが、春いくと、じつにいい香いがするそうだ。」
友だちは、らんについて、無関心のもののごとくただ故郷の山の美しさを讃美して、きかせたのであります。
私がその山へ、友だちにも告けずに、らんを探しにいったのは、すぐ後のことです。じつをいえば、矛盾と恥じますが、花の美にあこがれるよりは、一万円に値するらんを探すためだったのです。
山には、まだところどころに雪が残っていました。