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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页

青空文庫

私はたゞ、消耗する体力と闘いながら、一途に人間を追及しただけで、その人間像に異常なところが在るとすれば、それは私が異常なためではなくて、あらゆる人間が本来異常なものであるためだ。

私の精神が異常であるのは、私の作品が健全のせいだ、と言いきれないこともない。私の健康さの全部のものを作品に捧げつくして、その残りカスが私というグウタラな現身なのだよ、と誇示し得ないこともないのである。諸氏よ、精神異常者の文学だの、意志薄弱の文学などという前に、私の「にっぽん物語」を読んでみたまえ。そして、それから、君の言いたいことを言ってくれたまえ。(なお「にっぽん物語」という題名は、あらたに某誌へ続稿を連載する時には、私自身の新しく選んだ題名に変更するつもりである)

以上が本文の主旨であるが、以下、私は漫然と、私の精神の周囲を散歩してみようと思う。

★

伊豆の伊東へきて、もう九日になった。ちょうど一週間目に体重をはかったら、私は伊東へきて四キロふとり、六十七と八を上下する体重になっているのである。ここへ着いた翌日は六十四キロであった。六十七・五キロと云えば、ちょうど十八貫、私の生涯でこれほどふとったことはない。