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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页

青空文庫

私は京都で、たった二日のうちに、十五貫から十七貫五百になったことがある。これは脚気でむくんだせいである。むくむのも目方のうち、とは、その日まで気がつかなかったが、むくみにしても、にわかに二貫五百ふとると、我ながら堂々と、たのもしく、ズッシリとわが身の重みを感じるものである。モットモ脚気というものは、足が挙らなくなるものだから、そッちの方で甚大な重みを感じることも事実だが、鏡にうつしても堂々たるもの、但し、二日で二貫五百もふとると、人相まで一変してしまう。私の人相が、にわかに、出羽海に似ていたので、たいへん感服したものであった。但し脚気の薬をのんだら、たった三日で、もとのペシャンコになってしまった。その時以来、十七貫までふとったが、それ以上にふとったことはなかったのである。

私は十八貫という体重を発見して以来、その一日は、幻想的な思索にしずんだ。これは、まったく、異常である。しかし、どこかに理由がなければならないだろう。

私は温灸のせいかも知れないと考えた。この温灸は伊東へついた翌日、尾崎士郎の奥さんが教えてくれたのである。

私が二年前に伊東へ遊びに来たとき、尾崎士郎が妙なお灸をすすめた。